本ブログでも何度か紹介したように、世界経済のリスクの一つに「ギリシャ大統領選挙」があります。本記事では、なぜ経済規模が小さい一国の大統領選挙が、世界経済のリスクになり得るか?を簡単に解説致します。
目次
ギリシャ問題のポイント
- 現与党から大統領が選出されない場合、反緊縮派・現野党への政権交代が起る可能性が高い。
- ギリシャはEUに属し、通貨としてユーロを使っている。
- EU圏には、ギリシャ以外にも財政が不安な国がたくさんある。
- ギリシャが破綻もしくはEUを脱退する場合、他の財政不安国に波及する可能性がある。
この問題はギリシャの財政不安だけでなく、EUの構造問題も潜んでいます。
反緊縮派野党が解散総選挙では勝つ可能性が高い。
まずは、大統領選挙とその後の流れについて復習します。
大統領選挙は計3回行わます。現与党から選出し、1・2回目のいずれかで200票(3回目は180票で良い)獲得できれば現与党から大統領が選出されます。もし選挙で大統領が選出されない場合ギリシャ議会の解散総選挙となります。
では、なぜ大統領が与党かれ選出されず、解散総選挙となることがいけないのでしょうか?
その理由は、現与党が緊縮派であるのに対して、現野党が反緊縮派であるためです。記憶に新しいギリシャ危機からわかるように、ギリシャは財政が苦しく、債券の利回りも非常に高いため、デフォルトする可能性があるとされています。現与党の徹底的な緊縮政策により最悪の場面は切り抜け、少しづつではありますが観光産業に力をいれるなどして、財政も健全下の道を歩んでいます。しかし、ここで反緊縮派の野党が政権をとるとなると、財政面の不安(危機)が再び現れる可能性が高くなります。
現在の緊縮政策に国民は疲れており、解散総選挙となった場合、反緊縮派・野党が有利との見方が強まっています。
ギリシャの政局不安はヨーロッパ全土へ広がる
ギリシャ危機の再燃はなぜ世界に波及し得るのでしょうか?
それの理由は、ギリシャがEUに属し、通貨としてEU共通通貨であるユーロを使っている点にあります。つまりEUの構造問題にあります。
2つのシナリオ・リスクから詳細を見ていきましょう。
シナリオ1:ギリシャがEUを脱退する場合(通貨はユーロから自国通貨へ)
EUから脱退するメリット
まず、そもそもなぜ脱退があり得るかを説明致します。例えばある国の財政や通貨が弱くなった場合(日本を思い起こしてもそうですが)、国の政策・方針などで通貨量を調節等して危機を乗り越えようとします。しかし、ギリシャはEUに加盟し共通通貨ユーロを使っています。そのためギリシャ内の都合で通貨量の調節や経済政策を自由に行うことができません。そのためイギリスのようにEUから脱退し、自国通貨等を持つことで経済政策を自由に行い財政や景気を盛り上げようとします。
脱退は一国では収まらない。
もしギリシャがEUから脱退した場合、その流れは他の南欧諸国に波及するとされています。EUには経済・財政で苦労している国はイタリア、スペイン、ポルトガル等たくさんあります。現在はEUは全体的にはできるだけ協力するというスタンスですが、一国が脱退することで、その流れは他の財政難の国に波及する可能性があります。そして脱退が相次ぎ参加国が減れば、EUの存在意義も薄まり崩壊なってもおかしくはないでしょう。
シナリオ2:ギリシャのデフォルト
ギリシャがデフォルト、または財政が現在の基準から悪化した場合、EU圏でお金を出し合ってギリシャを救う必要があります。その場合、ギリシャに引っ張られてEUの財政も苦しくなります。またシナリオ1と同様、この流れは南欧諸国に波及し、EUの財政はさらに苦しくなります。
現在の大方の予想としては、EUから脱退国をださないことを優先的するようです。そのためEUが主体となり経済援助をギリシャにすることになると思います。反緊縮派への政権交代となればこのEUからの援助金はふくれあがりEU全体の財政を圧迫します。
莫大な流通量を誇るユーロ圏の財政悪化は、世界相場のリスクオフを招きます。
ユーロの構造問題は解決法がない?
ここまでお伝えしてきたように、ギリシャ危機の根源は、EU・ユーロという構造問題があります。経済の一体化は、活発な貿易・物流を生み、経済を活性化するメリットもある反面、各国の経済状況によって自由に経済政策ができないためデメリットもあります。
このデメリットは非常にクリティカルです。経済の弱い国は自由な経済政策がとれないため弱体化し、経済の強い国は弱い国に経済を引っ張られます。そのため、そもそも構造上の問題がEUにはあると私は思っています。
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