投資を始めた際に、理解に苦しむことの1つに為替と金融商品の関係があります。「株価インデックスが上昇したのに、私の持っているファンドやETFは上昇していない!?」そんな疑問を持った経験があるでしょう。私も投資を始めた頃には、このような疑問を持っていました。
本記事では、為替と金融資産(ETFやファンド)の関係をおさらいします。為替と金融商品の関係を明確にし、混乱をなくしましょう。
目次
為替と金融資産の関係
日本国内から海外の資産を購入する場合、円を外貨両替することが必要になります。海外ETFであれば、自分で円をドルなどに両替し、その後海外ETFを購入します。一方、ファンドや国内ETF(ヘッジなし)であれば、ファンド内で自動的に両替を行ってくれます。つまり、海外資産は、ドルなどの外貨ベースの価値で我々は購入したことになります。
海外資産保有時、また海外資産を扱う国内ETFやインデックスファンドの基準価値は、円ベースで算出されます。つまり、ファンドの基準価値には、インデックス自体の変動と為替の変動の二つが含まれることになります。
そのため、株価は上がったはずなのに、ファンドの基準価値が下落した場合は、ファンドのパフォーマンスが悪いことを疑う前に、為替の変動を確認してみてください。
円安が進むと海外資産のETFやファンドの基準価値が上がる理由
なぜ円安が進むと、海外資産のETFやインデックスファンドが値上がりするか解説します。
円安とは、他通貨と比較して円の価値が下がること
円安とは、円の価値が他の通貨と比べて、価値が下落することです。例えば、昨日1ドル=100円だったドル円の為替レートが、今日1ドル=110円になっていた場合を考えます。昨日、100円で1ドルに交換できたのに対して、今日は110円出さないと1ドルに交換できないことになります。つまり昨日に比べて、円の価値がドルに対して下落した(円安が進んだ)ことになります。
円安が進行した時の海外資産の変化について
次に、海外資産の基準価値と円安の関係についてします。上の例と同様、昨日1ドル100円だったドル円レートが、今日1ドル110円になったケースを考えます。
昨日、10,000円分の海外資産(米国株式インデックスに連動するファンド)を購入したとします。1ドル100円ですので、購入時は100ドル分の米国株式インデックスを購入したことになります。
本日、このファンドの評価額を調べたとしましょう。米国株インデックスは昨日から変動していない場合を考えます。
「株価が変動していないんだから、評価額も10,000円のままでしょ?」
しかし、11,000円になっていました。これはどうしてでしょう?これがまさに、円安が進んだことによる影響なのです。株価の変動がないので、米国株インデックスは、昨日同様100ドル分しか所有しておりませんが、1ドルが110円になったので、円換算の価値が上がり、11,000円となりました。
このように円安は、私たちの海外資産の評価額を上昇させることになります。
円安のメリットとデメリット
少し脱線しますが、海外資産の円評価額を上昇させる円安の他の側面について軽く触れたいと思います。
最近のニュースにもあるように、以下のようなメリットがあります。
- 輸出関連企業の業績アップ(円安により企業の円ベースの収益が上がる。)
- 円安による外国人訪日客の上昇
デメリットとしては、輸入品の上昇により、企業や家計の支出を増やすことにあります。
最近では、円安のメリットが企業に徐々に広がりはじめ、日本株も上昇しております。これらの点を抑えて、為替の動向を、たまに観察してみると面白いかもしれません。
どういう時に為替は変動するのか?
まず1つ断っておくと、為替というのは経済学で最も難しく、予測困難な分野であり、我々個人投資家はおろか経済学専門家でも予測が困難な分野です。為替分野が経済学の中で、唯一ノーベル賞を獲得したことのない分野であることからも、理論的にも非常に難しいことが伺いしれます。
昔は、貿易収支などが為替に影響を与えると言われていましたが、昨今では、金利差や地政学リスク(ギリシャの政局不安、ウクライナ問題、テロなど)が為替の変動要因になることが多いです。
日本やEUが金融緩和により金利が停滞しているのに対して、アメリカでは金利を上げる議論をしておりすので、日米の金利差が広がる気配から、円安が進んだりします。逆に、日本円は、スイスフランと並び、安全資産と言われています。そのため、地政学リスクや世界経済不安などがあると、円高に進みます。
ちなみに、今週は米国雇用統計の発表があります。アメリカの金利を決定するFRBが最も重視する経済指標と言われており、結果によっては為替が大きく変動するかもしれません。
本記事のまとめ
- 為替によって円ベースの基準価値は変動する。
- 円安は海外資産の評価額を上げる。
- 円安による日本経済のメリットもある。
- 為替動向もたまにはチェックすると、相場をしっかり理解できる。
我々は長期分散投資を目指したインデックス投資家です。日々の相場の変動に一喜一憂する必要はありません。しかし、このような相場や基準価値の変動要因をしっかり抑えておくことで、無用な不安や混乱をなくすことができます。しっかりと理解して、投資・資産運用を行いましょう。
参考文献:
- ユーロの正体
⇒為替関連の書籍で定評のある安達先生の著書です。ユーロだけでなく、為替全体の包括的な知識をつけることができます。 - 2014-2015 世界のマネーは米国に向かう
⇒米国金利のことや今後のアメリカ経済を占う上で参考になる書籍です。
参考 現在行われている、お得な口座開設キャンペーンは、以下をご参照ください。